同人誌を作ること

一年に一回くらいのペースで同人誌を作っている。作り始めたきっかけは最悪で、嫌いなオタクに負けたくないからみたいなそんな理由だった気がする。本当に終わっているのでもうオタク友達を作らない方がいい。

 

同人誌、薄い本なんて呼ばれるそれを知ったのは小学生の時だったと思う。実際に買ったのは中学生の時。当時はイベントに行ったりできなかったからアニメイトでよく買っていた。田舎のアニメイトの同人誌コーナーの広さなんて微々たるもので、好きなジャンルの本が必ずしもあるわけではなく必死に探してやっと一冊買えるなんてこともざらだった。

もう二十代半ばを過ぎ、三十歳が近づいてきているので同人誌との付き合いも十年以上ということになる。作り始めてからは二年と少し。昔は自分が作り手側に回るなんて思いもしなかったけれど、憧れがあったのは確かだ。

げんしけんというオタクサークルの日常を描いた漫画がある。アニ研漫研からなんとなくあぶれてしまったぬるいオタク達が、恋をしたり語ったりゲームしたり喧嘩したりしながら大学卒業の期間を過ごしていくという内容だ。

その中でサークルのメンバーが同人誌を作る話があった。出展先はコミケ(作中ではコミフェスという名称だった)初めて同人誌を出すのにコミケってすげーなーって今なら思う。

ぬるいオタクの集まりで、性格も様々で、同人誌製作は難航していた。落としましょうなんて話になって、やる気のある荻上という女の子がもったいないですと言って泣いて、オタクではないのになぜかサークルにいるパンピーパンピーて)の咲ちゃんが叱りつけて製作が進んでいくという、作中の中でもかなり青春的な話だった。

その話を読んで以来同人誌いいなと思っていた。同時に自分はこんな仲間もいないし、作れないよなとも思っていた。

 

でも今個人サークルとして、何冊か作れてしまっている。

仲間がいなくても同人誌は作れる。つらいこともあるけれどイベントに出れば作った良かったなと強く感じる。

 

同人誌作りはとてもつらい趣味だ。自分が好きなジャンルで、好きなカップリングを書いてるのに何がつらいのかとも思うけれどつらいものはつらい。

物語を生み出して、それが読者に可能な限り伝わるように言葉を選んで、表紙を作ったり依頼したり、印刷所だって無数にある中から選び、どうか上手く刷ってほしいと信じて入稿する。黒字になることは全然ない。常に赤字だし、マイナーなカップリングなので売れるか不安だし、感想が貰えなかったらはちゃめちゃに悲しくて暴れたりする。

 

それでも作るのは、手に取ってくれる人がいるからだ。

机の向こう側から「新刊一部下さい」と言われることがどれだけ嬉しいか。ネット越しに通販ありますかと聞かれることがいかにありがたいか。その気持ちを一度知ってしまったので、私はもう同人誌を作る前には戻れないと思う。

私は決して文章もストーリーも上手くないけど、好きです いつも読んでますと言ってくれる人もいる。たったそれだけで書いていて良かったと思える。意味があったんだなと感じられる。意味があったってちゃんと分かりたいから書いているのかもしれないね。

 

多分私はこれからも苦しい思いをするし、二度と作らないって何回でも言うし、一冊も売れないかもしれないって泣くだろうけど同人誌を作ると思う。

でもいつか一時創作で出したいね。

 

それでは。